卒園式にて・・・

野山の梅の花が満開となり、ウグイスの声が聞こえ、園庭の木々の芽が膨らんだ頃、年長さん達は、園を巣立っていきます。
 
 ある園の入園式と、3年後の卒園式に出席したことがありました。  園児にとって入園式は、初めて親と離れ、(後列の席に親はいますが、)知らない友達と知らない大人がたくさんいる会場でひとり、椅子にすわっていなければなりません。一人の子どもが 耐えられなくて泣き声をあげると、他の子どもも泣き始める、次第に泣く子どもの数が多くなり、先生はたくさんの子どもの対応に追われていました。式の終わりにある、楽しい歌の時間も 泣いている子どもが多く、歌う子どもはごくわずかです。  来賓席ではこのような状態に、明日からこの子ども達はこの園に登園できるのか、ただただ心 配するばかりでした。 

3年後、今度はこの子達の卒園式に出席しました。  卒園式に臨む園児達は、緊張しながらも、厳粛な式に胸をはって臨んでいました。呼名には、 大きな声で答え、園長先生から卒園証書をいただき、式歌を元気に大きな声で歌っていました。 園児なりの卒園を迎えた誇らしさにそれぞれの顔が輝いていました。3年間の思い出がよみが えってきたのでしょうか、入園式とは違い、今度は担任の先生方が園児の姿に涙をあふれさせて いました。
 
 幼稚園を外から見ていると、毎日の連続した生活の中で、子どもの成長を実感できることが少ないのですが、このような機会を得て、数年間の園児の成長に驚嘆しました。園児達は幼児期の大切な時を親や先生、友達、地域の人々、自然、物と関わりながら成長し、その中で具体的な体 験をしながら小学校以降の教育の基礎となる力を身に付けています。特に園児に関わる先生方の 存在は、その成長に大きく影響します。
 
以前読んだ「アメリカ・インディアンの教え」(加藤諦三著・扶桑社文庫)に「子どもたちは、こうして生き方を学びます」として、「心が寛大な人の中で育った子はがまん強くなります」「はげましを受けて育った子は自信を持ちます」「ほめられる中で育った子はいつも感謝す ることを知ります」「公明正大な中で育った子は正義心を持ちます」「人に認めてもらえる中で 育った子は自分を大事にします」「仲間の愛の中で育った子は世界に愛をみつけます」(一部抜粋)と書いてありました。卒園式の園児の姿に、3年間の園での保育が映し出されていたように 思いました。

 

栃木県幼稚園教育センター「幼児教育センターたより」